葬儀でストッキングの色は黒が基本。マナー違反にならない選び方と注意点
葬儀という厳粛な場にふさわしい装いを心がけることは、故人への敬意、そして遺族への配慮を示す大切な行為です。服装や身だしなみには様々なマナーがありますが、意外と迷ってしまうのが足元、特にストッキングの選び方ではないでしょうか。
「黒はわかるけれど、柄や光沢はどうだろう?」「冬場はタイツでもいいの?」「肌色ストッキングは絶対にダメ?」など、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。この記事では、葬儀におけるストッキングの色選びを中心に、マナー違反にならないための具体的な基準や、知っておきたい注意点について詳しく解説します。

なぜ葬儀では「黒」のストッキングが基本なのか
葬儀で黒い服装を選ぶのが一般的であるように、ストッキングも基本的には黒を選ぶことがマナーとされています。その背景には、いくつかの理由があります。
1. 喪に服す色としての「黒」
黒は、古くから喪失や悲しみを表す色として、世界中で弔意を示す際に用いられてきました。葬儀という、故人を偲び、遺族が深い悲しみの中にいる場において、黒という色は「喪に服している」ことを視覚的に示す役割を果たします。華美な色や明るい色を避け、静かに悲しみを共有する姿勢を表すため、ストッキングも黒で統一するのが最もふさわしいと考えられています。
2. 故人への敬意と哀悼の意
故人への敬意を表すためにも、黒のストッキングは重要な意味を持ちます。派手な色や装飾のあるものは、故人の冥福を祈るという儀式の趣旨から外れてしまう可能性があります。黒を選ぶことで、故人との最後の別れに真摯に向き合う姿勢を示すことができるのです。
3. 慎み深さと慈悲の表現
肌が透ける黒のストッキングは、単に色を抑えるだけでなく、ある種の「慎み深さ」を表現するとも言われています。故人や遺族への配慮から、肌の露出を最小限に抑え、落ち着いた印象を与えることを目指します。また、黒は他の色と比べて落ち着いた印象を与え、周囲に溶け込む効果もあります。
葬儀で避けるべきストッキングの色と素材
基本が黒であることに対し、どのような色が避けるべきか、そして素材についても明確な基準があります。
1. 黒以外の色は原則NG
黒以外のストッキングは、基本的に避けるべきです。具体的には、以下のような色が挙げられます。
- 肌色(ベージュ、ナチュラルカラーなど): 葬儀では、肌色ストッキングは「おしゃれ」や「普段使い」の印象が強く、弔事の場にはふさわしくないとされています。お通夜に急いで駆けつけた場合などに一時的に着用するという説もありますが、現代では黒が一般的であり、肌色だと逆に目立ってしまうリスクもあります。
- 白: 白は慶事の色とされており、弔事には不適切です。
- グレー、紺、茶色: これらの色も、黒ほどではありませんが、故人への弔意を示す色としては弱く、場にそぐわないと判断されることがあります。特に、明るめのグレーや紺は避けるべきです。
- その他の明るい色(ピンク、ブルーなど): 論外ですが、当然ながら避けるべき色です。
2. 柄物、光沢、ラメ、網タイツは厳禁
色だけでなく、ストッキングの柄や素材にも注意が必要です。
- 柄物: 小さなドット柄や、ワンポイントの模様なども、フォーマルな場にはふさわしくありません。無地を選ぶのが絶対条件です。
- 光沢のある素材: サテンのような光沢があるものは、パーティーのような華やかな印象を与えてしまうため、避けてください。マットな質感のものを選びましょう。
- ラメ入り: キラキラとしたラメが入っているものは、お祝いの席を連想させるため、葬儀には不適切です。
- 網タイツ・メッシュ素材: 極端に肌が透ける網タイツや、メッシュ素材のストッキングは、カジュアルな印象を与えたり、セクシーすぎる印象を与えたりする可能性があるため、避けるべきです。
ストッキングの厚さ(デニール)と丈の選び方
色や素材だけでなく、ストッキングの厚さや丈についても配慮が必要です。
1. デニール数:季節や会場の状況に合わせて
デニールとは、糸の太さを示す単位で、数字が大きいほど糸が太く、厚手になります。
- 夏場・通常時: 一般的には20~30デニール程度が推奨されます。このくらいの厚さであれば、肌がうっすらと透け、上品で涼しげな印象になります。
- 冬場・寒い地域: 寒さが厳しい時期や地域では、50~60デニール程度の厚手のストッキングやタイツも許容される場合があります。ただし、厚すぎるとカジュアルに見えたり、重たい印象になったりするため、あくまで防寒対策として、控えめな厚さのものを選ぶようにしましょう。100デニールを超えるような厚手のタイツは、普段使いの印象が強いため避けた方が無難です。
重要なのは、季節や会場の温度、ご自身の体調に合わせて、快適に過ごせる厚さを選ぶことです。ただし、どんな厚さであっても、色や柄、光沢の有無といった基本マナーは守る必要があります。
2. 丈:座った時も安心な長さを
ストッキングの丈は、座った際に太ももが見えないように注意が必要です。
- 膝上丈: 膝上15cm程度を目安に、座った時に肌が見えない長さを選びましょう。
- 太もも丈(ガーターベルトタイプ): こちらも同様に、ずり落ちてこないか、座った時に見えないかを確認する必要があります。
- パンツタイプ: ストッキングではなく、パンツタイプ(パンティストッキング)を選ぶのも一つの方法です。この場合も、デニール数や色、素材のマナーは同様に適用されます。
タイツはNG?冬場の寒さ対策について
「タイツはカジュアルだから葬儀には不向き」という意見を聞いたことがある方もいるかもしれません。確かに、厚手のタイツはカジュアルな印象を与えやすい傾向があります。
しかし、冬場の葬儀で寒さが厳しい場合、50~60デニール程度の厚手のストッキングや、それに類するタイツが許容されるケースも少なくありません。重要なのは、あくまで「防寒対策」として、かつ、できるだけフォーマルな印象を損なわないものを選ぶことです。
- 色: タイツも当然黒を選びます。
- 素材: 光沢やラメのない、マットな質感のものを選びましょう。
- デザイン: 装飾のないシンプルなデザインが基本です。
寒さで体調を崩してしまっては、故人を偲ぶことにも集中できません。周囲の参列者の服装なども参考にしながら、状況に応じて判断してください。ただし、迷った場合は、薄手のストッキングに、会場でひざ掛けなどを利用する方がより無難と言えるでしょう。
「肌色ストッキング」の例外について
前述したように、基本的には葬儀で肌色ストッキングを履くのはマナー違反とされています。しかし、ごく限定的な状況で許容される、あるいは許容されるという説があることも事実です。
1. お通夜に急いで駆けつけた場合
「お通夜に急遽参列することになり、黒いストッキングを用意できなかったため、肌色ストッキングで駆けつけた」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは、故人への弔意を示そうとする姿勢を優先した結果であり、ある意味で「やむを得ない」と解釈されることもあります。
しかし、現代においては、コンビニエンスストアなどで黒いストッキングが容易に入手できることもあり、この言い訳が通用するかどうかは疑問です。むしろ、肌色ストッキングが目立ってしまい、かえって不作法に見える可能性も否定できません。もし、このような状況に陥ってしまった場合は、できるだけ早く黒いストッキングに履き替えるか、遺族に丁重にお詫びすることが大切です。
2. 平服指定の葬儀や納棺式
「平服でお越しください」と案内された場合や、納棺式など、親族のみで行われる内輪の儀式では、服装の規定が比較的緩やかになることがあります。このような場合、状況によっては肌色ストッキングが許容される可能性もゼロではありません。
しかし、あくまで「平服」であって「普段着」ではありません。フォーマルな場にふさわしい、落ち着いた装いを心がけることが基本です。肌色ストッキングを選ぶ場合でも、光沢のないマットな質感のものを選び、清潔感のある足元を心がけましょう。
それでも、迷った場合は黒のストッキングを選んでおくのが最も安全です。
伝線対策は万全に
葬儀当日に限らず、ストッキングは非常にデリケートなものです。ちょっとしたことで伝線してしまうこともあります。
1. 予備のストッキングは必須
万が一、ストッキングが伝線してしまった場合に備えて、必ず予備のストッキングをバッグに入れておきましょう。黒無地の、マナーに沿ったものを用意しておけば、いざという時に慌てずに済みます。
2. 丁寧な取り扱いを心がける
ストッキングを履く際や脱ぐ際には、爪を立てないように注意し、優しく扱うようにしましょう。また、バッグに入れる際も、他の鋭利なものと一緒にならないように配慮が必要です。
足元全体の身だしなみにも気を配る
ストッキングの色や素材だけでなく、足元全体の清潔感も大切です。
1. 爪の手入れ
爪が長すぎたり、欠けていたりしないか確認しましょう。特に、サンダルを履く習慣がある方は、ペディキュアを落としておくのがマナーです。華美なネイルアートも場にそぐわないため、控えるべきです。
2. 靴とのバランス
ストッキングの色に合わせて、靴も黒のフォーマルなものを選びましょう。光沢のあるエナメル素材や、華美な装飾がついた靴は避けてください。
まとめ:迷ったら「黒無地」を選ぶのが基本
葬儀におけるストッキング選びで最も大切なのは、「故人への敬意」と「遺族への配慮」を忘れないことです。
- 色は原則「黒」: 黒以外の肌色、白、グレー、紺などは避ける。
- 素材は「無地・マット」: 柄、光沢、ラメ、網タイツはNG。
- 厚さ(デニール): 夏場は20~30デニール、冬場は50~60デニールまで許容される場合もあるが、フォーマルさを損なわない範囲で。
- 丈: 座った時に肌が見えない長さを選ぶ。
- タイツ: 冬場の防寒対策として許容される場合もあるが、フォーマルさを重視するならストッキングが無難。
- 肌色ストッキング: 基本的にNG。例外はごく限定的。
- 予備の準備: 伝線に備えて必ず持参する。
- 足元全体: 爪や靴など、清潔感のある身だしなみを心がける。
もし、ストッキングの色や素材について迷った場合は、最も無難で、失礼にあたらない「黒無地でマットな質感のストッキング」を選ぶようにしましょう。これらの点を踏まえ、故人への最後の別れにふさわしい装いで参列してください。

