【葬儀の封筒】香典袋・お布施袋の正しい選び方と書き方・渡し方マナー
突然の訃報に接し、悲しみの中にいらっしゃる皆様へ。葬儀に参列する際、故人への弔意とお悔やみの気持ちを表すために「香典」を包むのが一般的です。この香典を包む「封筒」、すなわち香典袋の選び方や書き方、そして渡し方には、故人の宗教・宗派や、包む金額、そして参列する方の立場によって、細やかなマナーが存在します。特に、初めて葬儀に参列される方や、普段あまり馴染みのない宗教・宗派の葬儀に参列する際には、どのように対応すれば良いか迷ってしまうことも少なくありません。
この記事では、葬儀で最も一般的に使用される香典袋を中心に、その選び方から書き方、そして渡し方までを、具体的なシチュエーションを想定しながら、失礼のない対応ができるよう、分かりやすく解説していきます。また、香典だけでなく、僧侶へのお布施や、葬儀でお世話になった方々へのお礼(心付け)に使う封筒についても触れ、葬儀の際の「封筒」に関する疑問や不安を解消することを目指します。

1. 香典袋選びの第一歩:故人の宗教・宗派と状況を把握する
香典袋を選ぶ上で、最も重要となるのが「故人の宗教・宗派」です。日本には仏教、神道、キリスト教など、様々な宗教があり、それぞれで弔いの形や使用する道具に違いがあります。香典袋も例外ではなく、宗教・宗派に合わないものを使用することは、故人や遺族に対して失礼にあたる可能性があります。
仏式の場合の香典袋
仏式の葬儀では、故人の魂が浄土へ旅立つことを願う意味合いから、蓮の花が描かれたものや、白無地の封筒が用いられます。水引は、慶弔両方に使える「双銀」や、弔事専用の「黒白」が一般的ですが、弔事用としてよりふさわしいのは「黒白」です。
- 表書きの選択肢:
- 御霊前(ごれいぜん): 仏式の葬儀で最も広く使われる表書きです。霊前に供えるという意味で、宗教・宗派を問わず使用できるとされています。しかし、故人が亡くなってから四十九日法要を迎え、霊魂が仏様になるとされる期間(これを「忌明け」といいます)までは「御霊前」を使用し、忌明け後は「御仏前」に改めるのが一般的です。ただし、浄土真宗では、阿弥陀仏の救済によってすぐに仏様になると考えられているため、「霊」という概念がなく、「御霊前」は避けるのが一般的です。
- 御仏前(ごぶつぜん): 四十九日法要以降、故人が仏様になった後に使用する表書きです。浄土真宗では、通夜や葬儀・告別式から「御仏前」を使用します。宗派によっては、忌明け前でも「御仏前」を使用する場合があります。
- 御香典(ごこうでん): 仏式全般で広く使える表書きです。宗教・宗派が不明な場合や、迷った場合に無難な選択肢となります。
- 御供物料(ごくもつりょう): お供え物として現金を包む場合に使用します。お供え物自体を渡す代わりに現金を包む際に用いられます。
- 宗派別の表書き: 例えば、浄土宗では「阿弥陀仏前」、日蓮宗では「妙法」など、宗派独自の表書きもあります。しかし、一般的には「御霊前」や「御仏前」、「御香典」で問題ない場合がほとんどです。もし、参列する葬儀の宗派が特定でき、かつその宗派独自の表書きがある場合は、それを使用するとより丁寧な印象を与えます。迷った場合は、葬儀の受付の方に確認するか、無難な「御香典」を選ぶと良いでしょう。
神式の場合の香典袋
神道の葬儀では、故人を「御霊(みたま)」としてお祀りする際に、仏式の「御霊前」とは異なる意味合いで使われます。神式では、仏教の象徴である蓮の花が描かれた香典袋は使用しません。白無地の封筒に、黒白または双銀の水引がついたものを選びます。
- 表書きの選択肢:
- 御玉串料(おたまぐしりょう): 榊(さかき)の葉に紙垂(しで)をつけた「玉串」を供える代わりに現金を包む場合に使用します。神葬祭で最も一般的に使われる表書きです。
- 御榊料(おさかきりょう): 玉串料とほぼ同じ意味合いで使われます。
- 御霊前(ごれいぜん): 神道でも「御霊」という言葉は使われますが、仏式の「御霊前」とはニュアンスが異なります。しかし、一般的には「御玉串料」の方がより適切とされています。
- 御供(おそなえ): 神様へのお供えとして現金を包む場合に使用します。
キリスト教式の場合の香典袋
キリスト教式の葬儀では、香典という習慣が一般的ではありません。しかし、近年では遺族の意向で受け取られるケースも増えています。この場合、カトリックとプロテスタントで封筒の選び方や表書きに違いがあります。
- カトリックの場合:
- 御花料(おはなりょう): 故人を偲んでお花を供える意味合いで、現金を包む際に使用します。
- お花料(おはなりょう): 「御」をつけない場合もあります。
- 封筒: 白無地の封筒を使用し、水引は不要です。蓮の花の柄が入ったものは仏式用なので避けます。
- プロテスタントの場合:
- 御花料(おはなりょう): カトリックと同様に使用します。
- 記念献金(きねんけんきん): 教会への献金として包む場合に使用します。
- 封筒: 白無地の封筒を使用し、水引は不要です。
無宗教・一般葬の場合の香典袋
故人の宗教・宗派が不明な場合や、無宗教で葬儀が行われる場合は、最も無難な「御霊前」や「御香典」と書かれた香典袋を使用するのが良いでしょう。白無地の封筒に黒白または双銀の水引がついたものが適しています。もし、葬儀の案内に「香典辞退」の旨が記載されている場合は、ご遺族の意向を尊重し、香典は辞退しましょう。
地域の慣習について
香典袋の選び方や水引の色には、地域によって慣習が異なる場合があります。例えば、関西地方では黄白の水引が弔事用として使われることがありますが、これは全国共通ではありません。もし、参列する葬儀が特定の地域で行われる場合や、その地域の慣習に不安がある場合は、事前に葬儀社やその地域の知人に確認しておくと安心です。
2. 香典の金額に合わせた香典袋の選び方
香典袋は、包む金額によって適切なものが異なります。水引の形状や豪華さが、金額の目安を示しています。
- ~1万円程度: 印刷された蓮の花や、白無地の封筒に印刷された水引がついたもので十分です。スーパーやコンビニエンスストア、100円ショップなどでも手軽に入手できます。
- 1万円~3万円程度: 本物の水引(双銀、黒白など)がついた、少し丁寧な作りの香典袋を選びましょう。文具店や仏具店などで購入できます。
- 5万円以上: より格調高い、本物の水引がついた香典袋を選びます。水引の本数が多いものや、装飾が施されたものもありますが、あまり派手すぎるものは避け、落ち着いたデザインのものを選びましょう。
注意点:
- 水引の結び方: 弔事では「結び切り」の水引が一般的ですが、香典袋に印刷されている場合は、その結び方を気にする必要はありません。
- 二重封筒の回避: 香典袋には、内袋と外袋があるものが一般的ですが、二重になっている封筒は「不幸が重なる」ことを連想させるため、避けるべきとされています。香典袋を選ぶ際は、内袋が一体になっているものか、二重になっていないものを選びましょう。
3. 香典袋の書き方:丁寧さが伝わる氏名・金額・住所の記入方法
香典袋の表書きや中袋の書き方にも、マナーがあります。故人への敬意と、遺族への配慮を示すため、丁寧に記入しましょう。
表書きの書き方
前述の通り、表書きは故人の宗教・宗派に合わせて選びます。文字は、悲しみを表す「薄墨」で書くのが基本です。薄墨は、故人を悼む涙で墨が薄まった様子を表しています。
- 筆記用具: 薄墨の筆ペンや毛筆が最も適しています。
- 代用品: 薄墨の筆ペンがない場合は、サインペンやボールペンでも構いませんが、黒すぎるインクは避け、やや薄めの色合いのものを選びましょう。万年筆やボールペンの場合は、弔事用の薄墨インクが販売されていることもあります。
- 書き方:
- 表書き(例:「御霊前」)を中央に書きます。
- 表書きのやや下に、差出人の名前を書きます。
- 連名の場合:
- 夫婦: 「夫の氏名・妻の氏名」と連名で書くか、夫の名前を中央に書き、その左下に「妻 〇〇」と書きます。
- 複数人(3名まで): 中央に代表者の氏名を書き、その左下に「外〇名」と人数を添えます。
- 複数人(4名以上): 代表者の氏名を中央に書き、その左下に「外一同」と書きます。この場合、別途、香典帳などに全員の名前と金額を記しておくのが一般的です。
- 会社・団体名: 「会社名・部署名」を中央に書き、その下に「一同」と添えるか、代表者の氏名を書き、その左下に「〇〇株式会社」などと会社名を添えます。
中袋(内袋)の書き方
中袋には、香典の金額、氏名、住所を記入します。こちらも薄墨で書くのが基本ですが、表書きほど厳密ではありません。
- 金額:
- 旧字体(漢数字)で、大字(だいじ)と呼ばれる改ざん防止のために用いられる書体で書くのが正式ですが、現在では一般的な漢数字でも問題ありません。
- 例:「金 壱万円也」または「金 10,000円」
- 「〇千円」や「〇百円」といった単位で書く場合も、旧字体または一般的な漢数字で記入します。
- 氏名:
- 表書きで連名にした場合、中袋には全員の氏名をそれぞれ記入します。
- 「外一同」とした場合は、中袋には「〇〇株式会社一同」などと記入します。
- 住所:
- 自身の住所と氏名を記入します。これは、後日、遺族が香典返しを送る際に必要となるためです。
- 「〇〇市〇〇区〇〇町〇丁目〇番地」のように、都道府県から正確に記入しましょう。
金額の相場について
香典の金額は、故人との関係性や、参列する葬儀の規模、そして自身の年齢や経済状況によって異なります。一般的な目安としては以下の通りですが、あくまで参考として、無理のない範囲で金額を決めましょう。
- 友人・知人: 5,000円~10,000円
- 親戚(いとこなど): 10,000円~30,000円
- 親戚(おじ・おばなど): 30,000円~50,000円
- 親(父母・兄弟姉妹): 50,000円~100,000円(※状況により異なる)
注意点:
- 偶数金額: 割り切れる偶数金額は、「別れ」を連想させるため避けるのが一般的です。ただし、4万円は「死」を連想させるため、特に避けるべき金額とされています。
- 「重ね重ね」の金額: 1,100円、2,200円、3,300円など、同じ数字が重なる金額も「不幸が重なる」ことを連想させるため、避けるのが無難です。
4. 香典の包み方・渡し方:心を込めて弔意を伝える
香典袋に現金を包む際にも、いくつかのマナーがあります。
お札の入れ方
- 新札は避ける: 結婚式のご祝儀とは異なり、香典では新札は避けるのがマナーです。新札は「前もって準備していた」という印象を与え、不幸を予期していたかのように受け取られる可能性があるためです。やむを得ず新札しか手元にない場合は、一度折り目をつけてから包むようにしましょう。
- お札の向き: 中袋に入れるお札は、肖像画が印刷されている面を下にし、すべて同じ向きに揃えて入れます。これは、故人の顔を見ないように、という配慮です。
- 枚数: 偶数枚を避けるのはもちろんですが、3枚、5枚といった奇数枚で包むのが一般的です。
袱紗(ふくさ)の使い方
香典袋は、むき出しのまま持ち歩かず、袱紗(ふくさ)に包んで持参するのが正式なマナーです。袱紗は、弔事の際に香典袋を包むための布で、相手への敬意と丁寧な気持ちを表します。
まとめ
葬儀に関する備えや判断では、一般的な目安を知ったうえで、契約内容や地域の運用、遺族の意向を確認することが大切です。分からない点は、関係する窓口へ早めに相談しましょう。

